※本記事は英語でもご覧頂けます:Navigating Through Uncertainty
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを受け、人々の行動や価値観、優先事項が変わりゆく中、6つの主要テーマが消費市場に恒久的な移行および一時的な変化をもたらしています。今求められているのは、迅速性と勇気ある決断、そして絞り込みです。企業は、パンデミック後にも残り続ける消費者の行動や価値観の変化に焦点を定める必要があります。世の中が急速に発展する中、リサーチ力と洞察力はこれまで以上に重要になります。
消費市場の発展を支える6テーマ
これらのテーマの多くは、これまでも既に存在していたトレンドを深化させたものです。例えば「ウェルネスの再定義(Wellness Redefined)」では、心身の健康を含むホリスティックなアプローチが強調されています。また、「消費者はどこでどのように買い物をするか(Where and How Consumers Shop)」では、オンラインやクリック&コレクトサービス、フリクションレスな(摩擦のない)購買体験、小売業者を介さず消費者に直接販売する企業やブランドの台頭といったトレンドが加速していることがわかります。
サステナビリティの追求から目的の追求へ:トリプルボトムライン
サステナビリティは、一部の人々が考えたように頓挫してしまっているわけではありません。むしろ、サステナビリティをより全体的な視点でとらえる「目的」の追求に向けて急速ににシフトしています。実際、ユーロモニターが2020年6月に実施した「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティ」サーベイ調査によると、45%の回答者が「COVID-19パンデミック下において企業がとった従業員や顧客への対応は、今後も恒久的に求められることになるだろう」と答えています。「社会」「環境」「経済」という、いわゆるトリプルボトムラインの間で持続可能なバランスを取ることは、思いやりがありオープンなコミュニケーションや信頼性、透明性とともに、業績の回復とロックダウン後の生き残りに欠かせない要素となります。
ホームテインメントと進化するコト消費:やりたいことは家にある
ホームテインメント(ホームとエンターテインメントを掛け合わせた造語)とは、以前は自宅以外で消費していた時間や体験を、自宅で行うことを指します。ビデオゲームの中でバーチャルコンサートを観賞したり、実際にデパートの化粧品売り場に行ったかのような体験ができるデバイスを購入したりすることに限らず、消費者が自宅で得られる新たな体験はこれからも増えていくでしょう。COVID-19以前から存在していたこのトレンドは、今日、急加速しています。そのような中、企業にとっての課題は、自宅の外での体験の方がより高価格な設定になることです。例えば、コンサートのチケット1枚はSpotify(スポティファイ)の年間契約料よりも高かったり、カフェで飲むコーヒー代は3~4ポンドになります。同水準の利益を自宅での体験で生み出す事は容易ではありません。
消費者はどこでどのように買い物をするか:買い物の新たなミッション
消費者の買い物する場所や方法には大きな変化が見られ、特にオンライン小売は恩恵を受けています。サブスクリプションサービスも好調で、その利便性だけでなく、自宅への配送や製品の供給が途切れないこと、そして同サービスで得られる新たな発見や顧客体験といった側面もまた、消費者から高く評価されています。消費者は外出する頻度を減らし、事前に計画したうえで店舗やモールに行き、素早く買物を済ませるようになりました。このことは、ビューティーやファッションといった、衝動買いに頼るところが大きな製品分野に大きな影響をもたらしています。一方で地元の商店は、消費者が近所で買物を済ませられること、混雑しておらずアクセスが良いことなどから、人混みのリスクを避けたい消費者から支持を得ています。当然、非接触型やフリクションレスな方法での買い物への移行が加速されており、人やモノに触らなくてよい小売店のコンセプトは、もはや近未来的というよりは優先条件になりつつあります。
変わりゆく消費者行動
Source: Euromonitor International Voice of the Industry COVID-19 Survey, July 2020
ウェルネスの再定義:不透明な時代を生き抜く上での防御手段としてのウェルネス
先行きが不透明な時代において、多くの消費者がウェルネスを、生活上のストレスや緊張への防御手段として見ています。現在、世界が直面している危機が健康に関するものであることもあり、ウェルネスは未だかつてないほど重要視されています。多くの国の経済成長が急激に落ち込む中、ウェルネスがもたらす付加価値と質がますます強調されるようになり、その優先順位は高まることになるでしょう。特に免疫力の向上を助ける製品や、心の健康や安らぎをもたらす製品は需要が増加しています。デジタル医療サービスの人気も急上昇しています。自宅はエンターテインメントの拠点であると同時に、ウェルネスの拠点であるとの考え方が拡がりつつあります。
イノベーションと新たな「コア」:優先順位の変化がもたらす市場機会
この10年間、新製品のイノベーションは、消費財ブランドの成長戦略の中心にありました。しかし、長引く深刻な世界経済不況と先行きが不透明な健康危機に際し、企業はリスクを取ることを控えています。それでもなお、メーカーや小売業者は競争力を長期的に維持するために、変わりゆく人々の優先順位やチャネルの好み、そして新たに生まれ来る(特に自宅内で増えている)消費機会に見られるチャンスに取り組んでいく必要があります。開発される新製品の数が減り、主力製品の生産に集中する動きがある中でも、イノベーションは消費財メーカーの成長の原動力であり続けるべきです。
「ニューノーマル」:公共の空間からプライベートな空間へ
「ニューノーマル」な世界の中で、消費者は公共の場よりもプライベートな場所にいることが多くなり、より多くの時間とお金を自宅で、そして自宅のために費やすようになりました。パンデミック前から見られていたトレンドの多くがパンデミックによって加速され、中でもデジタル化とEコマースの台頭は特に顕著です。今後はD2Cといった新しい販売方法の重要性がさらに高まり、また、消費者は地元の製品やサービスを求めるようになります。人々の中には「仮想世界疲れ」に悩まされる人も出てくることから、現実世界の中でも健康、機能性、品質に重点を置いたイノベーションを提供し続けることが、中長期的に重要になります。
危機後に台頭するために必要なのは迅速性、イノベーション、勇気ある決断
COVID-19が経済や消費者の動向に劇的な変化をもたらしたことは疑いようもありません。COVID-19は、消費者の生活の仕方、働き方、買い物の仕方を変えました。大恐慌以来最悪の世界的不況の中、支出の縮小が消費市場に与える影響は避けられず、消費者は2008年の世界金融危機時と同様に、自分たちの優先順位を見直しています。企業は迅速性とイノベーションに重点を置くとともに、勇気ある決断をすることで成長機会を見出し、今後の世界に残り続けるトレンドから発生するニーズに応えていかなければなりません。そして、勇気ある決定を下すためには、実用的なリサーチと洞察が不可欠です。
6つのテーマに関するより詳細な洞察については、当社の無料レポート「How Will Consumer Markets Involve after Coronavirus?」をご覧ください。また、この6つのテーマが、自社の事業や製品分野にどのような影響をもたらすかについて、詳しい調査にご興味がある方はこちらまでお問合せください。