※本記事は英語でもご覧頂けます:Feeding the World in 2050
世界の食糧生産・加工・流通システムは、2050年までに約100億人の栄養ニーズを満たすことが求められることになる。増え続ける食糧需要に対応するため、新興市場におけるアグリビジネスの発展や、生産から消費までのフードシステムの商業化の促進は、食料安全保障、経済開発、健康や栄養などの分野における国際開発(IDEV)部門の関係者にとって、今後も重要視すべき領域となるだろう。
アグリビジネスの状況は地域によって大きく異なる。国際的に相互比較が可能なユーロモニターのデータと分析を活用すれば、市場ごとのニーズや生産能力を明らかにすることができる。今後30年間は、成長が見込まれる人口密集地域、変化する消費者嗜好、そして台頭する流通チャネルを特定することが、フードシステムにおける生産能力のマッピングと世界の栄養ニーズを満たすための戦略を策定するうえで、極めて重要となる。
世界における農業生産の成長率 2015-2020年
飲食料品に対する消費者支出の見通し 2020-2025年
国際開発関係者は、生産および流通に関する深い見識を得ることで、地理的、人口動態的、行動学的といった消費者セグメントにかかわらず、食料入手可能性の向上と低価格化を促進するために政策と民間セクターの両方を有効に活用することができるようになる。このように、国際開発におけるフードシステムの発展のためには市場調査を活用し、栄養問題を重視しつつ、バリューチェーンの強化、流通の特定と改善、社会経済全般における消費者トレンドの理解に焦点を当て情報を収集することが欠かせない。
バリューチェーン分析
農業バリューチェーンには、原材料や機械の調達、加工、流通、マーケティングなど、様々なステークホルダーが関わっている。バリューチェーンを世界的に強化するためには、各国のポジショニングを、国、地域、世界レベルで理解することが不可欠となる。各国のバリューチェーン構造を明確に理解するための市場調査には、詳細なコスト、利益および差益の分析、主要企業とその市場シェアの特定、サプライヤーと消費者の位置関係のマッピング、また、消費者プロファイル、価格、嗜好に基づいたセグメンテーションなどが含まれる。あわせて企業統計、雇用、輸出入、収益性、サプライヤーなどに関する生産指標を使い、各セクターや地域における産業能力を明らかにすることも可能である。
また、各市場国ならではの市場の失敗、商機、リスクの特定をすることで、中小企業の競争力を向上させるための戦略的介入案の立案に活用することもできる。
ユーロモニターのフードシステムへのアプローチ
下記3項目(フードバリューチェーン、食環境、消費者ニーズ)にわたる主要ポイントの選定と調整
鍵となる流通チャネル
バリューチェーンの強化や輸出促進の成功をおさめるうえで極めて重要なのが、特定の地域の人々や消費層に最も効率的にリーチするために鍵となる流通チャネルを特定することである。取引の多くが非公式市場で行われる国についても、ユーロモニターは、それらの国々における食料市場を理解し、その市場規模を測定するための調査方法を考案し、試験を重ねてきた。
また、対面での意識調査は、消費者の習慣を把握することに有効的で、例えば、生物学的栄養強化(biofortification)された食品に対する消費者の購買習慣や意識を理解することなどに役立つ。より一般的には、意識調査を利用することで、特定の食品の人気度、好まれる店舗形態のほか、所得層、都市部と地方部といった社会経済的要因に基づく製品ポジショニングの傾向などを評価することができる。
消費者トレンドを理解する
国際開発部門のプロフェッショナルにとって、消費者の健康ウェルネスに関するニーズを理解することは、栄養バランス食品を取り巻く世界的なトレンドもあり、栄養強化食品やその他の栄養代替食に対する投資を検討する上で大きな力となる。
例えば、栄養強化食品の商業化の支援については、各国市場における食品のポジショニングごとの売上、主要な機能性成分ごとの売上、そして主な栄養素(タンパク質、繊維、糖分など)の一人当たりの消費量といった市場インサイトが、アグリビジネス関係者が消費者市場を理解し、栄養強化食品への移行に投資することを後押しする。さらに、各国における食品、そしてカロリーの入手可能性といった情報は、その国における食料品ニーズの度合いを示すものである。
世界における強化・機能性食品の成長予測 2020-2025年
新興市場におけるアグリビジネスの発展は、2050年に予測される世界の食糧需要を満たすための鍵となるだろう。ユーロモニターは、バリューチェーンの強化、ターゲットを絞った流通、栄養強化食品の商業化を通じて、国際開発部門の関係者が、各市場の生産状況を理解したり、影響評価を実施したり、栄養不良の状況や消費者の嗜好性を理解するためのサポートを提供している。
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(翻訳:横山雅子)