海外で事業を展開する企業にとって、現地市場の需要やトレンドを正確に把握することは重要な課題です。そんな企業をサポートするために提供しているのが、ユーロモニターの市場分析ツール『Passport』です。膨大なデータを有し、迅速な意思決定を支援しますが、情報量が多いため、効果的に使いこなすにはコツが必要です。
そこで、導入企業のベテランユーザーをお呼びし、Passportを使いこなすコツや、活用アイディアを共有していただく場として、今年から『Passportユーザー会』の開催を始めました。
今回は、第2回Passportユーザー会(2024年10月17日開催)の様子をお伝えします。
海外売上比率6割を誇るグローバル企業のエキスパートが登壇
第1回のユーザー会に引き続き、今回もPassportをお使いいただいている大手企業のベテランユーザー様をゲストスピーカーとしてお招きし、「グローバル市場で成功を掴むデータ活用術」と題したセッションにて、Passportの活用事例をご紹介いただきました。
また、後半は参加者の皆さま同士、自由に交流していただく場を設けました。
今回のゲストスピーカーは、日本を代表するグローバル企業で、長く国際市場のリサーチを担当されているA様です。また参加者として、グローバルマーケティングや海外戦略企画を担当される12名のビジネスリーダーが集まりました。参加者の業界は多岐にわたり、食品、医療、テクノロジー、コンサルティング、エンターテイメント、スポーツ用品など、日本有数の企業が名を連ねています。
- 海外進出するならどの国がいいのか
- 海外の市場を分析するには、どのような情報が必要なのか
- Passportをリサーチにどう活用すればいいか
このようなお悩みとともに、
- 他社の同じような部署の方と知り合う機会はなかなかないので、情報交換したい
という期待から参加された方も多かったようです。会場では、開催前から積極的に名刺交換が行われていました。
リサーチでどこまで未来予測できるかが、海外進出成功の鍵
まずはゲストスピーカーとしてA様にご登壇いただきました。A様の所属されている企業は日本を代表する消費財メーカーで、海外売上比率60%超えと、驚異的な数字をお持ちです。長年リサーチ統括をご担当されているA様には、Passportが現在のようにオンラインデータベース化される以前から、グローバル市場における戦略立案にユーロモニターのデータをお役立ていただいています。
「グローバル展開のマーケティングには、独特の辛さがあります。日本にいたら海外のことはわかりませんが、そんな中でデータを駆使して未来予測をしなくてはなりません。上席からの質問にも、なぜそう考えるのかという理由を準備する必要もあります」というA様。
3年後の市場はどうなるのか、そう考える根拠は何か。海外進出のマーケティング担当者として責任を持ち、確実なデータとともに仮説を立てたいという気持ちから、常に情報収集を続けているとのこと。
A様の会社は、海外、特に東南アジアでの市場シェアが高く、現在も成長し続けています。現在の成功は、早い時期に海外進出を決めた経営判断とともに、データ収集や現地でのインタビューを含む綿密なリサーチと、的確な未来予測の結果によるものです。
「海外進出を果たした日系企業が戦うのは、現地のローカルメーカーです。日本式をやみくもに押し出しても成功しないし、現地を知らないとビハインドになります。まさに“敵を知り己を知らば百戦危うからず”(孫子)です」
通常、他国での事業展開には1次データ(独自調査で得られる情報)が有用な場合が多いです。しかし、広範囲にわたる1次データ収集は時間とコストがかかり、効率が低下します。
そこでA様の会社では、2次データをメインに収集し、商機が見えた2カ国まで絞り込みます。その後、1次データの収集に移行する手法を採用しています。また、これらの2カ国を単独で捉えるのではなく、リージョン全体を視野に入れ、各国をハブとして周辺地域にも展開可能かを検討する、広域的な市場戦略を取っているとのことでした。
参加者から「現地ではリサーチデータに基づかず、感覚的な判断で業務を進める傾向があり、これが本社との意思疎通の不一致を引き起こす要因となっています」との質問が上がりました。それに対し、A様は「実際、日本より現地の生の情報のほうが強いのは確かです。現地の情報が正しくて、ソースもあるならそちらに書き換える必要もあります。ただ、横比較や未来予測など、ヘッドクォーターにしか出せないこともあります。そのすり合わせが大事ですね」とコメントされていました。
A様「現在、世界的なメーカーでさえ従来の市場シェアを失いつつある状況下において、現地のローカル企業が活用する情報伝達手法(TikTokなどのSNSプラットフォーム)を的確に把握し、戦略に組み込むことが不可欠です」と、海外市場の実情もお話しくださり、参加者のメモを取る手が止まりません。
従来のデータ収集方法に加え、Passport、Lifestylesサーベイを上手に利用する
その国の消費者をとりまく情報には、気候や宗教、文化、流通、住居、所得など、さまざまなチャネルがあります。A様は、WPPやIMF、WHO、ILOといった一般的な指標に加えて、各国政府統計局に出向いて情報を収集されてきました。もちろん、外務省のHPの海外渡航情報で、安全面にリスクがないかも確認されています。
それに加えて、経済指標、市場規模だけでなく、消費者トレンドの潮流を知るためにPassportを使いこなしておられます。
「Passportの魅力はカバレッジの広さ。また、ユーロモニターが独自のロジックで出している将来予測も非常に役に立っています」とのこと。そして、現地のトレンドをPassport内の『Lifestylesサーベイ』から見つけているとお話しされました。
日本にいながらにして、海外の消費者の全体像を理解することは難しいものですが、A様はLifestylesサーベイで消費者トレンドの潮流をつかむことができているとのことでした。
例えば、Passportを使えば、国別の世帯人数や可処分所得、日用品の市場規模や売上数量がわかります。合わせてLifestylesサーベイを参照することで、その国の消費者の勤労意欲や、環境対応意識の変化、年ごとの推移も知ることができます。ここで、生活者の価値観や行動を深掘りすることができ、想定とのずれがあれば理由を考察するのです。
リサーチ結果は国間比較表としてひとつの表にまとめて、さらに考察を加える
またA様は、実際に作られている国別の比較表を公開してくださいました。
国間比較表はExcelで作成し、表頭に国名を、表側に市場規模や人口、経済指標、安全性(外務省HPで渡航回避情報を確認)、チャネルやプレーヤーなどを並べていきます。
どの国の優先順位が高いのか、成長市場を狙うのか、成熟市場を狙うべきなのか、また国を狙うのか、リージョンを狙うのか。横比較すると、新たな気づきが得られるとのこと。
企業、テーマによって項目をカスタマイズすればよく、こうして出来上がった国間比較表が、海外進出計画の判断軸になっていくそうです。
A様は「企業ごとにオリジナルの項目を追加したり、会社の課題や商流を追加して、この表をどんどんカスタマイズしていくといいですよ。市場の成長性や自社の強み…。軸の選び方は、持っている課題で変わります」とアドバイスされていました。
この表を目の当たりにした参加者からは、
- こうした表作りを本来やらなければいけないと思ってはいたものの、アウトプットの先が見えていませんでした。こういったデータがあれば、海外進出に弾みがつきますね。
- 上役に提出するために、リサーチ結果をどのような表にまとめるべきか、その完成形を知ることができました。
という感想が聞かれました。
共通の課題に挑む担当者が集う、他業界とのネットワーク構築の場。活気あふれる交流会
第2部の交流会では、グローバルマーケティング担当者同士が課題や成功事例を共有し、積極的に情報交換を行っていました。ゲストスピーカーのA様のもとにも参加者が次々と訪れ、さらに具体的な質問を重ねて理解を深めようとする姿も見受けられました。
なお、アンケートでは、今回のユーザー会にご参加いただいた皆様から『非常に満足』との評価を多数いただきました。
- 海外市場の変化が激しいことを再認識できる貴重な機会になりました。
- 参加企業の皆様と名刺交換をしながら、グローバルマーケティングの担当者同士、共通する課題に直面していることを実感しました。このような交流の場は非常に貴重で、多くの企業の方々と情報交換ができたことは大変有益でした。
- 他企業の海外事業に関する戦略や課題を共有する機会がこれまでなかったため、今回のユーザー会で多様な意見を伺えたことは非常に有意義でした。
- 自社の他部署ではすでにPassportを活用していたものの、私の部署ではまだその活用が進んでいなかったため、どのように活用すべきか理解が深まりました。
今回ご参加いただいた企業の皆様は、いずれも海外で事業を展開する日系企業同士であり、共通の目標を持つと同時に、同じ課題に取り組む同志とも言える存在です。海外市場での売上拡大を目指す高いポテンシャルを持つ各企業が、今後どのようにデータを活用し、効果的な海外展開を進め、ローカル企業との競争に勝つかが問われています。ユーロモニターは、これらの挑戦をサポートし、皆様の成功を後押ししてまいります。
世界200以上の国と地域のさまざまなデータをオンラインで瞬時に把握できる市場調査データベース『Passport』、消費者サーベイのデータ「Lifestyle」、他のソリューションをご用意しています。Passportは市場参入のみならず、参入後のシェア拡大や売上アップに対するフェーズにもお役立ていただけます。
関心を持たれた方は、お気軽にユーロモニター東京オフィスまでお問い合わせください。